Körsbärsdalenに桜を見に行きました

マルメから車で東へ40分、ルンド市のVeberödという町の近くにある、その名もKörsbärsdalen サクラ谷というところに満開の桜を見に行きました。

南スウェーデン郊外にはゆるやかな丘陵が連なる風景が多いのですが、ここは少し違って、小川を挟んで小さな谷が500mくらい続いていて、その左右の傾斜地に桜の木が並んでいます。小川と並ぶ小道を散歩しながら桜を眺めるのもいいのですが、ちょっと両脇の傾斜地に登れば満開の桜の花が目の高さにあり、いつもと違う視点から楽しむこともできます。

ここの桜は、日本で見られるような、うわぁっと圧倒されるような桜ではなく、色も淡くて花のつき方もほどほどで、なんだかふわ~っとした感じです。まるで「長くつ下のピッピ」で有名な作家アストリッド・リンドグレーンの「はるかな国の兄弟」Bröderna Lejonhjärtaに出てくるサクラ谷そのままの景色です。なんて知ったかぶりをしていますが、うちの奥さんがこの本のことを知っていて教えてくれました。あとでルンド市のウェブサイトを見たらやはり、リンドグレーンのサクラ谷そのままの景色が広がっている、彼女がこの話を書く前にここを訪れたのかどうかはわからないけれど、と書かれていました。

この谷を見下ろす一番いい場所に、
モダンな外観の小さなB&B1軒建っています。他には、ちょっと離れて普通の家が1軒あるだけです。2週間前に下見に来た時は、桜はまだ蕾で、かわりにVitsipporアネモネの真っ白な絨毯が辺り一面を覆っていました。B&Bのおかみさんに、桜が満開の時にまた来るから、その時はコーヒーを飲ませてもらえるかと聞いたら、うちはB&Bだけでコーヒーショップはやってないのよと言われました。宿泊客以外にもコーヒーとケーキでも出せば間違いなく儲かるだろうにと思ったのですが、今こうやって傾斜地に毛布を広げて、目の前に静かに広がるサクラ谷を見ながら、温かい陽射しを浴びて持ってきたパスタサラダや果物、コーヒーを楽しんでいると、よくわかりました。ここには、コーヒーショップとか似合わないし、要らないのです。Lagomな暮らしとか言いながら、無意識のうちに商業的なものを求めている自分に、まだ修行が足らんなあ、と反省したのでした。



たぶん一週間あるかないかの満開の時期ですが、平日のせいか訪れる車も10台くらい。駐車スペースも3台分くらいしかなくて、みんな林道の路肩に止めているけれど、1台来ると1台帰っていくので問題なし。車を降りるとみんな思い思いの場所に散らばっていくので、ほかの人の姿は桜や他の木々に隠れてほとんど見かけません。時折どこかで子供の声がかすかに聞こえたり、ゆっくり散策する老夫婦に出会ったりしますが、もうほとんどサクラ谷全体を貸し切りの気分です。夢中になって写真を撮っていたら、バッテリーが空になって携帯が死にました。でも写真を諦めて携帯から目を上げたら、陽射しによって変わ
る木々の色、花の香り、せせらぎの音や鳥たちの声が、いっぺんに押し寄せてきました。サクラ谷には携帯も似合わない。花見の宴も似合わない。ただ静かにふわ~っとした景色を眺めてぼ~っとする。時間がいつもよりゆっくり進んでいく、気持ちのいい春の日でした。

コメント

  1. 素敵ですね。おとぎ話にでてきそうな風景。

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    1. マルメの住人もあまり知らない穴場だそうです。

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