Rövarekulan自然保護区を歩いてきました

マルメから北東へ40kmちょっと、高速を使って車で30分ほどのところにある、Höör市のRövarekulanという自然保護区を歩いてきました。 https://skane.naturskyddsforeningen.se/hittaut/mellersta-skane/rovarekulan/

Rövarekulanは、この辺りを流れるBråån 川が削ってできた約2.5kmの細長い渓谷で、両側は高さが最大20mほどの急斜面になっていて、主にブナなど広葉樹の美しい森が広がっています。1975年に自然保護区に制定され、2kmから5km程度のよく整備された歩きやすいハイキングコースがあります。入口には広い駐車スペースもあり、そばには 川沿いにベンチが置かれたBBQエリアもあります。

Rövarekulanという名前は、直訳すると「強盗の弾丸」という物騒なものですが、その昔ここが強盗の巣窟だったことが由来のようです。強盗たちは、街道をやってくる旅行者たちがこの渓谷にかかる石橋Valvbroを渡るのを待ち伏せて襲撃したらしく、近くの鉄製のドアに襲撃時に撃ち込まれた銃弾が残っていたと言われています。

1836年には、当時皇太子だったオスカル1世がRövarekulanを訪れ、その記念の石碑が立っています。彼は、1844年に父カール14世の後を継いでスウェーデンおよびノルウェー国王となり、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの統一国家設立を目指しましたが、実現しませんでした。

1800年代後半から1970年代までは、大人数が踊れるスペースとレストランを備えた施設があり、地元の人達が毎週土曜の晩に民族音楽のライブ演奏に合わせてダンスを楽しんでいたそうです。最盛期にはかなり人が集まったようで、当時近くを走っていた民営のイスタッド-エスロブ鉄道に、土曜の晩になると臨時のRövarekulan駅が設置されたとか。その鉄道も廃止され、1975年には施設も撤去されて、今はせせらぎの音と鳥の声しか聞こえない静かで自然豊かなオアシスになっています。

今回は、地名の由来でもある強盗の襲撃ポイントだったValvbroの石橋を渡って歩き始めました。この石橋は1870年に改修され、現在も使われています。いまの季節は、ここからコース沿いに斜面の上に登って渓谷の外を見渡すと、一面黄色い菜の花と青空という典型的な春のスコーネ地方の風景が広がります。

そこから斜面を下って渓谷におりてくると、ブナ林の木漏れ日の中で野生のRamslökクマニラが辺り一面を覆っていて、可憐な白い花とニラの香りが溢れています。ここは自然保護区なので生えているクマニラを勝手に取ることはできませんが、先日知り合いの庭に群生しているクマニラをごっそり取らせてもらい、ラーメンや餃子に入れてその野生の美味しさを満喫したばかりだったので、美しい景色に感動しながらも、頭の中をニラ料理が次々とよぎっていきました。

渓谷の底の川沿いに歩いて出発点の駐車スペースまで戻ってくると、まだまだ陽が高くて明るいのに、10台ほどいた車はみんな帰ってしまい、この素敵な渓谷が私達だけの貸切り状態でした。うちの奥さんと、今回一緒に歩いた友人Shoさんは、スウェーデンの民族楽器ニッケルハルパを演奏する仲間なのですが、二人は車に積んでいた楽器を引っ張り出し、流れる川のほとりに立って早速弾き始めました。素朴な民族ダンスの音楽が川の水音と混ざり、それが渓谷の斜面で反響しているようで、なんだかとてもいい感じでした。昔の人たちも同じように民族音楽を聞きながらここでみんなで踊ったんだろうなあと思うと、ふっと100年くらい時間が後戻りしそうな不思議な感覚でした。


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