Midsommardagen 夏至祭
今年は6月24日土曜日がスウェーデンの夏の到来を祝うMidsommardagen夏至祭でした。毎年、6月19日から26日の間の夏至の日に最も近い土曜日が夏至祭、その前日の金曜日がMidsommarafton夏至祭イブとして休日になります。この日は、キリスト教の洗礼者ヨハネの誕生日でもあります。ヨハネはイエス・キリストより半年早く生まれたという言い伝えから、クリスマスが12月25日と決められた後に洗礼者ヨハネの誕生日が6月24日に設定されました。なおスウェーデンでは、洗礼者ヨハネの誕生日も移動祝日で、毎年夏至祭と同じ土曜日が祝日となります。因みに、キリスト教で誕生日が祝日となっているのは、イエス・キリスト、聖母マリア(9月8日)、そしてこの洗礼者ヨハネの3名だけです。
夏至祭には、どこの街の広場にもMajstångマイストングといわれる、白樺の大木に野の花々やモミの葉などを美しく飾り付けた夏至柱が立ちます。マイストングは、農作物の収穫を祝い、子孫の繁栄を願う夏至祭になくてはならない豊穣のシンボルです。これは、ドイツなど他のヨーロッパ諸国の5月祭で使われる柱Maypoleメイポールが伝わったものですが、夏の遅い北欧では5月には飾り付けに使う花がまだあまり咲かないので、6月の夏至祭で使うようになりました。でも名前は5月柱のまま。あまり細かいことにこだわらない、ゆる~いスウェーデンらしさが出ています。
マイストングの周りでは、民族楽器ニッケルハルパの演奏に合わせて、地元の人達が大人も子供もみんな手をつないで、輪になってフォークダンスを踊ります。民族衣装で着飾っている人たちもいますし、女性やこどもたちは近くの野原で積んだ草花で編んだ花の冠をかぶります。
子どもたちが踊る定番の曲としては、日本でも有名な「クラリネットをこわしちゃった」と同じメロディが出てくる「Små grodorna小さなカエル」や、「Vi äro musikanterわたしたちは音楽家」などがあります。どちらも、カエルの仕草や楽器を弾く格好などの振り付けがついた楽しい歌で、大人も子供も一緒に歌いながら踊ります。「Små grodorna, små grodorna är lustiga att
se. Ej öron, ej öron, ej svansar hava de. Kou ack
ack ack, kou ack ack ack, kou ack ack ack ack kaa. 小さなカエルはヘンチクリン。耳もシッポもありゃしない。クーアッカッカ、クーアッカッカ、クーアッカッカッカッカー」「Vi äro musikanter allt vi från Skaraborg.
Vi kan spela fio-lio-lio-lej.
Vi kan spela basfiol och flöjt. わたしたちは音楽家。スカラボリからやってきた。楽器を弾けるよ、フィオリオリオレ。楽器を弾けるよ、ヴァイオリンにフルート」
私達が住んでいるエスロブ市でも、街の中心にある公園で夏至祭のお祭りがありました。うちの奥さんが参加しているニッケルハルパの演奏グループも、夏至祭の週末は引っ張りだこで大忙し。民族ダンスのグループと一緒に、朝から4つ(前日の夏至祭イブから二日間で7つ)の老人ホームを駆け足で回って慰問の演奏をします。演奏して踊る方も60代以上のベテランが大半なので、2日間で7ヶ所は体力的にもたいへんなのですが、ホームの老人たちが楽しみにしてくれているということで、毎年欠かさずに訪れています。偉いなあ。
老人ホームの慰問が終わると、今度はマイストングが立てられた広場に駆けつけて、ステージでの演奏です。最初に、民族ダンスグループが、マイストングの周りで伝統のフォークダンスを披露します。これは、このブログで前に紹介したNationaldagen建国記念日に披露されたものと同じなのですが、夏空のもと、マイストングの立つ広い野原でのダンスは、きれいな民族衣装と相まって、より華やかで楽しい感じが伝わってきます。ダンスグループの周りを囲む大勢の観客も、耳慣れたメロディに手拍子をしながら楽しんでいます。
次は、いよいよ祭りのメイン、大人と子どもたちのダンスです。民族ダンスグループのメンバーが周りで見ていた人たちを広場の中央に招き寄せます。どちらかと言うとお父さんやお母さんたちの方が嬉しそうで、恥ずかしがる子どもたちを引きずるようにしてマイストングの踊りの輪に参加していきます。最初恥ずかしがっていた子どもたちも、輪に入って音楽が始まれば、みんな楽しそうです。
毎年子供のダンスの唄を担当している民族ダンスグループのおじさん(と言うかお爺さんと呼んだ方がよさそうなベテラン)が、ニッケルハルパの演奏に合わせてステージからみんなの歌をリードします。でも、3曲も続けると、その前に老人ホームや広場でさんざん踊ってきたおじさんはもはやスタミナ切れで、「もうダメじゃ」とか言いながら歌声もとぎれとぎれで苦しそうです。でも、広場の大人たちがみんなで歌いながら、ダンスはまだまだ続きます。「小さなカエルはヘンチクリン。帽子もズボンも履いてない。クーアッカッカ、クーアッカッカ、クーアッカッカッカッカー・・・」
広場でのダンスが終了すると、みんな自宅や友人宅、パーティー会場などに移動して、外はまだまだ明るいけれど夕食の時間です。ディルという香草を入れて茹でたポテト、マリネしたニシンの酢漬け(玉ねぎ、にんにく、トマト、マスタードソースなど、いろいろな味のマリネがあります)、サーモンやスペアリブなどが定番で、これを大量のビールやアルコール度数40度以上の強い蒸留酒シュナップスを飲みながら食べます。食後には、この夏初めて採れたイチゴを使ったケーキやデザートが登場します。気分が良くなってきたらみんなで歌い、さらに酔いが回ると踊り出す人たちもいたりして、大人たちは白夜の夜を飲み明かします。
唄って踊って食って飲んで潰れる、これがスウェーデンの夏至祭の正しい過ごし方です。翌日の日曜日は誰も起きてこないので、街中に人がおらず、シーンと静まり返っています。ああ、だから夏至祭は土曜日に決まってるんだ、次の日はみんな使い物にならないから。でも、うちの奥さんの所属するニッケルハルパの演奏グループは、日曜日も2ヶ所の教会で行われた夏至祭の礼拝に参加して演奏していました。本当にタフなおじさんおばさんたちです。ニッケルハルパの優しい音色は、夏の青空の下でダンスと一緒に明るく聞くのもいいけれど、敬虔な雰囲気の礼拝堂で静かに聞くのもまた違った趣があって、どちらもなかなかいい感じでした。
こうして夏至祭が終わると、北欧は一番良い季節を迎え、子ども達は約2ヶ月の楽しい夏休みに入ります。多くの大人たちも、夏至祭に合わせて約4週間の夏休みを取り、郊外のサマーハウスなどで家族とゆったりと過ごします。皆さんも良い夏をお過ごしください。Glad Sommar!
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